カフェベルガ・ボイス

障害者の社会参加を応援するカフェの広報紙。バックナンバーを掲載しています。

たけやぶつづり 第三回 それぞれの趣味(前編)「ゲームを通じて仲良くなった友達がいます」

 ようこそ。ここは竹やぶに建つ不思議な屋敷です。ここにはいろんな人が住んでいて、それぞれまったく違う特徴を持っています。
発達障害』と呼ばれる私たちはいったいどんなことを楽しく感じているのでしょうか? 今回から前後編として、カフェベルガの訓練生の皆さんに取材した、それぞれの趣味をご紹介します。皆さんと同じ趣味の方はいるでしょうか?


 カフェベルガでは、様々な『発達障害』の若者が訓練に取り組んでいます。前回はその中から、19歳でAD/HD(注意欠如/多動性障害)と診断されたAさんのお話を、小さい頃からご紹介しました。
 Aさんは診断を受けてから、支援をしてくれている施設の方や地域のクラブで、絵本制作に取り組んだり体を動かしたりしていました。今号のベルガ・ボイスの1面でお知らせしたチャレンジアートフェスティバルには自作のイラストを発表された方もいましたね。
 では、他の訓練生はどういった趣味を楽しんでいるのでしょうか? 実際に詳しく聞いてみました。

「幼い頃から、ゲームを楽しんでいました」
 と語ってくれたのは、19歳のAD/HDでアスペルガー症候群のBさんです。
「元々家族がゲームに親しんでいて、自然に自分も遊ぶようになりました。ドラクエなどのRPGを、みんなでわいわい攻略するのが好きです」
 ゲームには色々な遊び方があるのですが、中でもレベル上げやアイテム集めなどの『コンプ要素』と呼ばれる、こつこつとした楽しみ方に魅力を感じるそうです。また、ゲームを通じて人との交流もしているとか。
「とても有名なタイトルなので、世界中にたくさんファンがいるんですね。そんな人たちと、インターネットを介して盛り上がっています」
 なんとも若者らしい楽しみ方ですね。でもBさん、渋い趣味もお持ちだそうです。
「実は、入院して治療を受けた時、主治医からゲームを禁止されてしまったんです。それで、やっても大丈夫な趣味の中から、散歩を選んで始めました」
 それが今でも続いているそうです。どんなところが好きなのでしょうか。
「家の周りでも知らなかったことがあって、新しい発見ができるんですね。いつも家族とや一人で歩いているんですが、それを世間話の種にしたりもしています」
 ゲームと同様、誰かと話すことが好きなんですね。

 26歳のアニメ鑑賞を趣味とするCさんも、日本各地のアニメ友達と交流しているそうです。
「アニメは作画・脚本・キャラクターデザイン・背景設定・音楽・声優・演出、全てを網羅した総合芸術であるところが、楽しい、と感じています」
 大学生の頃から6年にわたり、ほぼ毎週楽しんでいるとのことです。
 私も経験がありますが、最近はインターネットも普及しているので、アニメやドラマを見ながらツイッターなどで『実況』して楽しむことができますよね。同じ感想を書き込んでいる人を見ると嬉しくなりますし、自分では思いつかなかった深い考察やトリビアを目にしてうなる、といった楽しみもあります。
 23歳の広汎性発達障害、また身体表現性障害であるDさんは、カードゲームを趣味としています。
「保育園ぐらいの頃、アニメを放映していたカードゲームを周りの子たちと始めたのが最初でした。その後小学校や中学校に上がっても、新しくできた友達と同じゲームをしていました。
 高校の時は、ゲームを通じて話をするようになった友達がいます。趣味以外の話もいろいろしますよ。漫画とか、別のゲームの話とか、学校の先生の面白かったエピソードとか……、だべっている感じですね」
 今でも、時々会っては遊んだりだべったりしているそうです。
「この遊びは、相手とコミュニケーションを取りながらできるところが楽しいです。カードゲームをやめちゃった人とも付き合いはあるし、趣味が仲良くなるきっかけになっていますね」
 最近はアニメを始め、バラエティ番組なんかでも取り上げられるようになったカードゲーム・ボードゲームですが、やはり同じテーブルに着いてわいわい言いながら時間を共有できるのは、他のことには代えがたい楽しみです。


 さて、今回は仲間と一緒に楽しんでいる趣味をお送りしました。皆さんと同じ趣味を持っている訓練生はいたでしょうか?
 次回、後編は、趣味を一人で楽しんでいる、と答えてくれた方へのインタビューを中心にお送りします。